お侍様 小劇場 extra

    “春一番vv” 〜寵猫抄より
 


春といったら何を連想しますか?
サクラに花見に入学式?
それへ至る、もちょっと前の、春の兆しといったら何でしょか。
梅に雛祭りに卒業式?
寒かったり暖かだったり、
日がわりで入れ替わる目まぐるしい気候の最中に吹き抜ける、
南風のことを思いつくのは、
東西南北に細長い日本では、土地によって差がありすぎますかしら?

東西といえば、
小さな島国・日本ですが、それでも地方地方で風俗は様々に異なって。
ケ○ミンSHOWは、毎週楽しく観ておりますvv
例えば“桜餅”を比較しても、西と東では微妙に異なるものをそうと呼び、
長命寺餅は長命寺餅ともいって、うぃき先生によると、
1717年(享保2年)、江戸幕府八代将軍徳川吉宗が隅田川に桜を植えたところ、
向島長命寺の門番、山本新六がその葉を使った餅を作リ、
売ったものが最初とされるのだそうな。
道明寺餅の方は、
平安時代の餅菓子である“椿餅”が原型といわれていて、
故に全国的に“桜餅”と言えば、
こちらの 道明寺粉で作る上方風桜餅が一般的である、とのことです。
ちなみに、Morlin.が好きな団子菓子は、相変わらずに 花見団子vv ですvv



        ◇◇



そういえばお雛様の菱餅も、花見団子と同じ配色ですよねと、
七郎次が訊いて来たのが、あれは確か…

 「お懐かしい話ですね、それ。」

今日のお三時は、
商店街の和菓子屋さんで買い求めた
雛あられと桜餅に花見団子という、
久蔵を含めてもすっかりと男所帯だってのに、
立派なお雛祭りVer.であり。

 「確か、桃色はサクラや桃の花で、
  白は雪、
  緑はその下から芽生える草を意味しているんですよね?」

もちっと詳細を並べるならば、
赤い餅は先祖を尊び厄を祓うため、目出度いとされていて。
そこでと、解毒作用のある山梔子
(クチナシ)で赤味をつけて、
桃の花をあらわしており。
白い餅は菱の実を入れることで血圧低下の効果をえて、
清浄を表す残雪を模し。
緑の草餅は増血効果がある蓬を使い、
春先に芽吹く蓬の新芽によって穢れを祓い、
萌える若草を喩えた…のだとか。
そういった注釈は置いといて…のクチだろう、

 「にゃ?」

今日は淡い緋色のベストを羽織った
小さな王子こと、仔猫の久蔵はといえば。
塩漬けのサクラの葉にくるまれた桃色の餅を、
黒文字の楊枝でちょいちょいと
小さく切り分けてくれている七郎次の手元。
わざわざ立ち上がってのその身を寄せまでして、
まじっと見つめておいで。
和菓子もケーキも大好きな甘党の仔猫さんは、だが、
そういえば、このお餅はまだ食べたことがなかったような。

 “手作りの練りきりとか、恐る恐る食べさせてましたからねぇ。”

今でこそ、危ない食べ物も随分と把握したし、
それとは別な格好になるかもしれない、
猫には苦手とされてるはずな、
柑橘類も好きなところは変わり者の坊ちゃまで。
いやまあ、それをいったら、
他の部分でも大いに変わっている存在ではあるのだが。

 「はい、あ〜んしてください。」
 「にゃあvv」

明るい陽光の満ちたリビング、
金の髪をそれぞれに淡く目映く光らせて、
お互いへの笑みまろやかに浮かべた母と子が、
緋色の菓子を食べさせ合ってる図の、
何とも麗しく優しい構図であることか。
米粒のような小さな小さな犬歯が覗くほどまで、
そのお口を彼なりの出来るだけ大きく開けた小さな坊やへ。
どうぞと進呈して差し上げた餅は、
楊枝を摘んでいる七郎次の小指の先ほどもないくらい
小さなそれであり。

 「〜〜〜〜vv////////」
 「美味しいですか? それは良かったvv」

大人であれば一口でひょいと食べられようほどに、
さして大きな餅ではないながら、
このペースで食べきろうというのなら、
一体どのくらいの時間がかかるのやら。

 「…勘兵衛様?」

召上らないとは…お嫌いでしたか?
いやなに、先に食べ終えてしまうのもつまらぬのでな。
そんな気遣いを珍しくも繰り出す御主なのは、
相手を気遣って、というよりも、
自分が手持ち無沙汰になるのがつまらないからかも知れず。
もきゅもきゅ、もむもむ、
小さめの薔薇の蕾みたいな、可憐なお口を動かす王子に、
気がつきゃ何もかものペースを合わせていると、ここでも知れる、
そんな島田せんせえのお宅の春催い……。






   〜Fine〜    2010.03.03.


  *某様のところで、
   “桜餅を勘兵衛様に運ぶ猫キュウちゃん”を拝見しましてvv
   それでつい、ウチでも書いてみたくなりました。
   雛祭りには縁のないお宅ですが、
   五月飾り、今年は出しましょうかなんて、
   シチさんがこそ〜りと、勘兵衛様に進言しているかもですねvv

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